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「津軽の石で綴る太宰治の世界」の作品 「葉蔵のこころ」


先日のしろがねGalleryでの作品展の中で、いちばん人気だったのが「葉蔵のこころ」。

太宰治の「道化の華」と「人間失格」に登場する、大庭葉蔵のイメージでつくった作品です。

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(作品の展示に添えていた説明文)

この作品は、1935年(昭和10年)太宰治26歳の年に発表された「道化の華」と、1948年(昭和23年)39歳の年に発表された「人間失格」の両方に登場する、大庭葉蔵をテーマにしています。

太宰治自身の投影であるとされる葉蔵は、
「恥の多い生涯を送って来ました。」
と、「人間失格」の冒頭で語っています。

自分は廃人になってしまったと、さまざまな悪行を重ねた自分の人生を振り返ります。

しかし、葉蔵のことを昔から知るスタンド・バアのマダムの言葉は、

「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、……神様みたいないい子でした」

と、本人が思っている自己像とはかけ離れたもの。

自分では自分が悪人のように思えて悩んでいても、他人から見えているのは純粋な心のほうなのではないかと思い、この作品をつくりました。

白神山地で採れる花紋石に、透明な心の象徴として水晶を添えています。

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アジャスターには、葉ちゃんということで葉っぱを添えてみました。

石の色合いがとてもシックなので、お好きな方いらっしゃるかな?とも思ったし、小説のテーマも明るいものではないので、つくるのをどうしようかとも思ったのですが、この石を見ていると大庭葉蔵そのものに見えて、どうしてもつくりたかったのです。

自分の中で、この作品展の「ハート」だった作品でした。

どの作品が人気が出るかは、本当に自分には全くわからなくて、展示してみたらこの作品がいちばん好評でした。

石好きの男性の方がほめてくださったり、世代もさまざまの女性からも好評で、本当につくってよかったと思いました。

お求めくださったのは、とても優しい雰囲気をお持ちの素敵な方。
他の作品をほとんどご覧にならず、いちばん奥に展示していたこの作品の前にすぐいらして、試着なさってすぐお決めになったのが本当に印象的でした。

あ!葉蔵さんお迎えがきた!と本当に嬉しかったです。

今回の作品展では、展示の関係で、作品は後日郵送させていただいたのですが、おお送りする前に写真を撮っていたところ、石の持つ雰囲気が以前と全然違っていて、とても晴れ晴れしていたので、わたしもとても嬉しかったです。

よかったね。葉ちゃん。これから行くところは光でいっぱいよ。
そんな風に自然と話しかけていました。

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裕福な家に生まれ、才能に恵まれながら、自分を「生まれた時からの日陰者」のように思い、
「ほんとうの人間らしい生活が、僕にできるかしら。」
と自分自身について悩み苦しむ、大庭葉蔵。

小説の中で、葉蔵は自分自身についての悩みから、さまざまな困難を経験し、自己像をますます暗くしていきます。
しかし、周囲の人の言葉は、それとはかけはなれたもの。

「道化の華」の中の看護婦の眞野の言葉。
「眞面目なんですのよ。眞面目でございますから、眞面目でございますからお苦しいこともおこるわけね。」
そして、「人間失格」のスタンド・バアのマダムの言葉。
「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、……神様みたいないい子でした」

自分自身について悩んでいても、きっと、他の人から見えているのは、純粋な心の部分や、そこから生まれたもの。
ただそれは自分では決してわからないもの。
誰にでも、純粋な心の部分を見てくださっている方が必ずいる。
本当に大切なのはそこ。
そう思って作品をつくりました。

きっと、自分自身について悩みすぎないことって大事なのだと思うのです。

 あなたの心が暗闇であれば 出会うものは ことごとく禍いとなります
 あなたの眼が明るく開かれていれば 出会うものは すべて宝となります

これは空海の言葉だそうですが、本当にそうだなって思います。
幸せは心の中にある。

そんなことを考えつつ、作品を送り出しました。
いってらっしゃーい(T□T)/。。

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別れのさみしさはどの作品にもありますが、作品が持ち主のもとへ行くのは嬉しいものです。
元気でね。

太宰治の作品は青空文庫で読めますので、ご興味ある方はぜひ^^
道化の華
人間失格






by songsforthejetset | 2014-12-09 04:05 | アクセサリー・Lumiere
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