人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「パリ・ジュテーム」

先日「パリ・ジュテーム」を観にいってきました。

久々にヨーロッパらしい映画観ました。
フランス語はやっぱり素敵ですね。
こうやってフランスの映画観たら、フランス語勉強したくなります。

18の短編で、20区あるパリをカヴァーしています。
さながらパリのガイドブックのような印象をうけますが、普通の観光客が行かないサン・ドニ周辺やピガールなど、いろんな"パリ"にスポットライトを当てています。

「パリ・ジュテーム」っていうタイトルから想像される、ステレオタイプな甘くてロマンティックなイメージとは裏腹に、ここにあるのは観光客の私たちも垣間見ることのできる、生活感漂うそのままのパリでした。
パリが好きな人なら、うーん、あるなあって思うはず!

難点は、何しろ短編が18もあるので、もっと観たい!って思う作品でも、さっさと終わってしまうこと。
良い点は、もう観たくないなあっていう作品も、さっさと終わってくれることです。。

もう観た友達から、感想を書いてってリクエストがあったので書きますが、これから観る方は、ネタばれもあるので、ご注意ください。

******

2話目、アラブの女の子の髪の毛がこぼれるシーンがよかった。
男の子も、素直でフレッシュな感じで素敵だった。
若い2人のときめきに、おじいちゃんが最後ちょっぴり協力するところなんて、いかにも向こうの人らしくて素敵でした。

印刷所のお客とそこで働く男の子の話、ガス・ヴァン・サントらしいアンビエントな空気感のある映像でした。
お客の男の子は、日本だったら、「あんたオーラの泉の見すぎ」と言われるであろう。。
金髪でタンクトップ姿が、イノセントな感じでよかった。
この監督さん、こういうタイプのキャラクターを"現実世界のエンジェル"みたいに登場させるなあって思います。
きっと好きなんですね。
あの後どうなったんだ!!

ジュリエット・ビノシュ出演のお話、馬のシーンが「耳に残るは君の歌声」のジョニー・デップみたいでした。
石畳と馬ってなんだか似合いますね。ひづめの音も。
ヨーロッパ映画って、馬を神秘的な存在として登場させているもの多い気がします。
日本だと「美しくて忠実な乗り物」的な描かれ方が多いけれど、捉え方の感覚が違っていて面白い。
ジュリエット・ビノシュは「ショコラ」のマダム役がいちばん好きですが、年をとってもきれいだなあって思う。
ソフィー・マルソーもきれいだし、フランスの女優さんの味のある年のとり方って好きです。

エキゾティックな顔立ちの美しい移民の女性が、自分の赤ちゃんを預けて、お金持ちの住む16区にベビーシッターに行く話。
子守唄を自分の赤ちゃんに歌ってあげる時と、お金持ちの赤ちゃんにの歌ってあげる時のトーンの違いが恐かった。
この後赤ちゃんにいじわるでもするんじゃないかって一瞬ドキッとした。
なにもなくてよかったです。

他に愛人ができた男性(セルジュ・ゲンズブール似(笑))が、奥さんと別れようと思ったら、末期の白血病ということがわかって、奥さんに2度目の恋をする話。
最後の、やわらかそうな白いシーツが印象的でした。
「死ぬまでにしたい10のこと」って見てないけど、同じ監督さんだそうです。
こういうお話が好きなのかな?また機会があったら観てみよう。

パントマイムの2人、お互いが見つかってよかったです。
手放しで喜んでいいんだかよくわからない不気味感が微妙な展開だった(笑)。
足の動きがパタリロみたいというか、年末に研究室の床にワックスがけする時に使うポリッシャーみたいでした。
男の子のランドセルがなぜあんなに(笑)。

クリストファー・ドイルの作品は、キッチュなPVみたいです。
主演の個性的な男性は、1960年代にエリック・ロメールやゴダールが参加して作られた「パリところどころ」のプロデュースをした方なんだそうです!
そういえば何だか映画の雰囲気似てる。。
これも1960年代のパリの風俗が垣間見られる、ステキな短編集でした。
1つ1つのお話はもうちょっと長かった気がします。

盲目の青年と女優志望の女の子の話、とってもよかった。
映像とちょっとせつないお話がぴったりでした。
「ラン・ローラ・ラン」「パフューム」のトム・ティクヴァ監督の作品でした。
この監督さんは、製作費がたくさんかかってないほうが良さを生かせる監督さんなのかも?って思いましたよ。
映像に不思議なエキセントリックさがありますね。
ナタリー・ポートマン、知性が顔に出ていて、飾らなくても美しいところが大好きです。
2人がプールに飛び込む場面が素敵だった!
あと2人のそばをたくさんの人が通過する映像は、撮影が楽しそうでした。

アフリカ人の男性が、パリでいろいろな職業に就いたけどうまくいかず、最後路上で刺されてしまう話。
こういう人生を感じさせる移民の人たちも、パリには溢れているのです。
笑顔がとっても素敵なアフリカ人の女優さん、ほんとに美しかった。
私は18の作品の中で、いちばん映画としてよくできていたと思いました。

ペール・ラシェーズ墓地の話。
オスカー・ワイルドのお墓には、ほんとにあんなにキスマークがついているのだろうか?
そんなに人気があるとは知らなかった。。
某マイミクさんだけじゃないんですね。。
オスカー・ワイルド役になっていたのが、この映画の最後の、アメリカ人女性のエピソードの監督さんなのだそうです。
ブライアン・フェリーとピーター・コヨーテを足して2で割ったような、茶目っ気たっぷりな感じでした。

イライジャ・ウッドの吸血鬼のお話は、半分くらいからほとんど目をつぶっていました。
「シン・シティ」に続き、またこんな世界でこんな役が妙に似合う、イライジャ・ウッド。。
この人妙にオタクっぽくて、なんかいい味出してます。

共に60代であろうと思われるカップルが、正式な離婚調停の前にレストランで会う話、大人の会話が素敵でした。
「2人で駆け落ちでもするかい?」
「もう一回したじゃない。」
離婚して、お互いの愛人(共にすごく年下)をお互いの養子・養女にして、みんなで住もう!っていうアイデア、何かフランスならではの発想ですね。。
この女優さん、きれいだと思ったら、「きみに読む物語」のおばあちゃんでした。
あの映画でもきれいだった。

フランス語を習って憧れのパリにやってきた、アメリカ人の中年女性の話。
この映画を劇場に観にくるような女性は(ちょっと自分もこんな感じかも?やばい!!)って思ったに違いありません。私も思った(笑)。
あんまり美しくない「旅情」といったらいいだろうか。ロマンスもないし。
主演の女優さん、「ミリオンダラー・ベイビー」で印象的でしたが、いるいるこういうおばちゃん!って思うアメリカ人のひとつのジャンルです。
ジョージ・シーガルの彫刻の中にいそうだ(笑)。

******

こんな映画のような一場面に、いつでも遭遇できるのがパリっていう街だと思います。
どうしようもなく街が素敵なので、そこに住んでいる人も、出来事も、ロマンティックにならざるを得ないくらい、完璧な舞台装置なのです。

私も印象的だったことを。

初めて訪れたパリで、美術館に行った帰り、外に出るともう夜になっていました。
季節は冬で、霧のような雨も降っていて、夜景と雨に濡れた石畳がなんともロマンティックです。。
しみじみパリだなあ。。って感動しながらセーヌ河畔をてくてく歩いていました。

そしたら男女のカップルが、楽しそうに笑いながら、道の向こう側からこっちへ走ってきました。
パーティーにでも行く途中かな?って思えるような、ちょっとドレスアップした2人でした。
2人は立ち止まり、こちらを見てすごく幸せそうにニコっと笑って、そうしたら男の人が着ていたコートで、女の人を大事そうに包んでキスしたのです。

キス自体全く珍しいことではありませんが、なんだかドアノーの有名な写真のように際立って美しかった。
何かもうすべてが完璧で、ほんとに映画みたいでした。
パリってやっぱりすごいなあ。。って思った。

街が素敵だから、人もより素敵っていいですね。
いろんな都市でこんなの撮ったら面白そうです。
「岡山ところどころ」とか(笑)。
by songsforthejetset | 2007-05-04 07:13 | 映画
<< 「ラブソングができるまで」と幸... 占いと「出石芸術百貨街」 >>