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有隣荘「太田三郎展」と倉敷グリーンハーモニー


有隣荘「太田三郎展」と倉敷グリーンハーモニー_c0089310_22504096.jpgこの前倉敷に遊びにいってきました。

いいお天気だったから、日傘をさして歩きました。
休日の美観地区は人でにぎわっています。

これは大原美術館。
1930年に開館した、日本初の西洋美術館です。


有隣荘「太田三郎展」と倉敷グリーンハーモニー_c0089310_2311342.jpgこの日行ったのは、大原美術館の別館のうちのひとつ、有隣荘。
http://www.ohara.or.jp/200707/jp/4_info/data/oota2008.html

公開期間が春と秋の何週間かだけなので、一度行ってみたかった。
大原美術館の創始者の大原孫三郎が、病弱な奥さんのために、落ち着いた住まいをと考えて建てられたものだそうです。

有隣荘は論語の一節「徳は弧ならず 必ず隣有り」から名づけられ、設計・デザインには中国銀行や大原美術館の設計を手がけた薬師寺主計、明治神宮や築地本願寺の設計を手がけた伊藤忠太という2人の建築家と、洋画家児島虎次郎も関わったそうです。


有隣荘「太田三郎展」と倉敷グリーンハーモニー_c0089310_23151792.jpg迎賓館としても使われ、昭和天皇をはじめ多くの貴賓客をお迎えしたという由緒ある建物なのだそうです。
年2回の特別公開の際には、現代美術が展示されます。
この春は太田三郎さんの展示が行われています。

太田さんは、津山市在住のアーティストです。
切手や広告などの紙類、植物の種などをつかって作品を発表されている、私も大好きな作家さんです。

"その作品は、なにげない日常が豊かな物象、関係に満ち溢れた存在であることをそっと気づかせてくれる"

これはチラシの言葉ですが、ほんとそのとおり。

毎日の何気なく、規則正しい生活の中で得られるものを大切にする太田さんの作品は、とってもチャーミングで潔癖な印象です。
有隣荘には、「太田」の表札が掲げられていて、これも作品。

玄関を入るところから、三島由紀夫や太宰治の小説の世界にタイムスリップしたような気持ちになりました。
まだ以前ここに住んでいた人の気配が、色濃く残っているのを感じます。

入ってすぐの洋間には、御影石の暖炉や、漆喰のスタッコワークが美しい天井、かつては温室として使われていたというガラス張りの小部屋があります。

作品を展示してあったけど、作品よりも「建物の持つ時間」の方が圧倒的な印象で、作品を観るどころではありませんでした。
積み重ねられた生活の時間と歴史がつくる室内の重みは、人の力の及ぶものではないと思いました。
この建物の中の空気は、時の流れは、外とは完全に違っています。

お隣には見事な和室。
庭からの眺めには、おもわずため息がもれたほどでした。

大小の石と、草木を配した風雅な庭の向こうには、なんと大原美術館のギリシャ様式の建物が、絶妙の借景になっているのです。
美観地区のベストビューポイントは、まちがいなくここ!!って思いました。
写真撮影ができないので残念ですが。。
一番すばらしい景色を、奥さんのためにつくった、大原孫三郎のやさしい気持ちが伝わってくるようでした。

屋久杉を使った欄間など、時代を感じさせる立派な造りのお部屋。
圧倒的な時間の堆積を感じさせる、こんな特別な場所では、どんな作品を展示しても、建物の持つ時間の強さに埋もれてしまう気がしました。

太田さんの作品は、過ぎていく日常の中の「時」を記録したものなので、そこには有隣荘とはまた別の時が流れているように感じました。
そして作品はもうすでに、有隣荘の昼間の光の影に消えはじめているかのように見えました。
二つの埋もれていく時の記憶。

二階にあがると、太田さんの日常の風景を移したような、インパクトがあって楽しい展示が待っていました。

いちばん好きだったのが、娘さんが毎朝、太田さんに起こしてもらいたい時間を書いたメモ。
太田さんは早寝・早起きなので、娘さんは部活やテストで起こしてもらいたい時間を、メモに書いて置手紙にしていて、それを捨てずに取っていた太田さんが、それを作品としてディスプレイしたものです。
書いてある内容もほほえましくて、ほのぼのしていて、中高生の女の子らしい可愛さが伝わってきます。
そしてなぜか、起こしてほしい時間が5:59とかすごいはんぱ(笑)。

以前奈義町の美術館に行った時に、偶然太田さんにもお会いできて、丁寧でおだやかで人柄は、作品そのままだなあって思ったことがあります。
「ものが捨てられない」性分の太田さんの作品は、切手や手紙、植物の種など、時間のなかで形と意味を変えていくものを表現の手段に選んでいます。
ここにもまた時間の堆積があって、時を刻んでいるのです。

そして!
2階の窓からの眺めは、さらに絶景!!

今まで一度も見たことのない美観地区がみられます。
完璧な美しさでそびえる大原美術館の建物に、青々とした柳、吹き抜ける風。

なんだか昔ここに住んでいた方が、どんな気持ちでこの風景を見ていたのか、その心の動きまで感じられるかのような風景でした。
有隣荘、すばらしかった。
5/11までの公開です。

美観地区を抜け、アイビースクエアを通って倉敷市民会館へ。
マイミクおばおばさん出演の、倉敷市民吹奏楽団グリーンハーモニーのコンサートがあるのです。
おばおばさんはマトリョミン・プレーヤーですが、トランペッターという顔も持っている、多才な方なのです。

倉敷市民会館について、まだ少し時間があったので、1階の食堂に入ってみました。
おなかがすいたので唐揚げ定食を頼んだら、これがすごいおいしかった!
コーヒーまでついていて大満足だったのですが、ゆっくり食べていたらコンサートの時間にちょっと遅れてしまいました。。

有隣荘「太田三郎展」と倉敷グリーンハーモニー_c0089310_23473171.jpgステージの上にはグリーンハーモニーの皆さんが。
すごい大人数で華やかです。

「パガニーニの主題による幻想変奏曲」、世界初演の「四季万葉」の大曲は、曲も演奏もすばらしかったです。

特に「四季万葉」は、コテコテに和風な感じではなく、なんとなくジャズの雰囲気も感じさせる、軽やかで典雅な感じの、色彩豊かな曲でした。
衣桁にかけられた内掛けと、春の風を思わせるような感じ。

あと、「篤姫」のテーマや「カルメン組曲」大好きなので、とっても良かったです!
のだめカンタービレのメドレーもすごくよかった。
ガーシュウィンの出だしのクラリネットの方は、すごいプレッシャーだったでしょうけど、音がよく伸びていて堂々とされてて、すごいなあって思いました。
ベニー・グッドマンとかも演奏されたら似合いそう。

アンコールの「千の風になって」は、特に好きな曲というわけでもないのに、涙があふれて大変でした。
泣いてる方他にもいらっしゃった。
すごいツボを刺激する曲ですね、これ。。

吹奏楽なのでストリングスがないのに、それを感じさせない繊細な響きでした。
編成が大きいことと、演奏の質が高いからなのだと思います。
おばおばさん、素敵な演奏を聴く機会を下さってありがとうございました!
トランペット姿は新鮮だったです(笑)。

帰りにオープンしたての天満屋に寄って、オリジンズでジンジャーのコロンのムエットをいただきました。
雑誌とかで見ていてずっと興味津々だったので。
すごい爽やかな香りですね!
バッグの中からいつまでも爽やかに香っていました。
楽しい1日でした。
by songsforthejetset | 2008-05-05 00:29 | 芸術いろいろ
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