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藤井康生さん講演会 「アナウンサーに学ぶ質問力 -医療面接に役立つインタビュー技法-」その1


歯学部で、NHK名古屋の藤井康生アナウンサーの講演会がありました。
「アナウンサーに学ぶ質問力 -医療面接に役立つインタビュー技法-」
とってもよかったです!

どうしてNHKのアナウンサーさんの講演会が??

なんと歯学部の苔口先生が、藤井さんと同級生だったことから実現した夢の企画でした。
なかなか聴けない講演会とあって、講義室はいっぱい!

インタビュー技法とは「聞く力」「話す力」「質問力」。
相手からよりよい言葉を引き出すということ。


それは医療の場でも、日頃のコミュニケーションでも大切なことなので、そういった技法を学ぼうという講演会でした。

藤井さんは昭和54年にNHKに就職されたそうですが、"会話を作るのが上手でなくて、聞く耳もなかった"とおっしゃるほど、会話がいちばん苦手だったそうです。
入社後、先輩にアナウンスや話し方の特訓をしていただいたり、声の出し方なども日頃から自分でいろいろ努力されたのだそうです。

現在、大相撲名古屋場所のアナウンサーとしても活躍されていて、オリンピックの中継も何度もご担当され、選手とのインタビューからは、その年の流行語大賞になった言葉も生まれました。
そういったご経験から、インタビューについての貴重なお話をしてくださいました。

「患者さんと1対1で話すことも多いと思いますが、相手の話をいかに聴けるかがすべて」

「その人を見る目」、「知識」、「相手のことを考えること」が大切なことだとおっしゃっていました。
インタビューはコミュニケーションだから、相手があって自分があるもの。
人は一人ひとり違うのだから、「目の前の相手に興味を持つこと」、「自分をわかってもらうこと」が大切で、つまりは「技法」ではないのだということ。
そういったことが、相手の"心からの言葉"をひきだすことにつながる。

とても楽しく、ためになる講演会で、ずーっとメモをとりっぱなしでした(笑)。
せっかくなので3回に分けてご紹介します。
まずは「オリンピック編」から。


1996年のアトランタオリンピックでは、マラソンをご担当されていた藤井さん。
銅メダルを取られた有森裕子選手とは、同じ岡山県出身ということで、親しく話せる間柄だったそうで、日頃から普段の練習も見に行かれていたそうです。

1992年のバルセロナオリンピックで、エゴロワとの激闘の末、2位の銀メダルだった有森選手は、"もっと早く勝負していたら"という思いをずっと持ち続けられていたそうです。
その後かかとの手術、大変な苦しいリハビリを越えて、1995年の北海道オリンピックで見事優勝されます。
そして1996年のアトランタオリンピックでは、ロバ、エゴロワに続き、銅メダルを獲得します。

競技後の選手へのインタビューは、ミックスゾーンというところで行われるのだそうで、まずお父さんとお母さんと抱き合う有森選手。
その後フランスのTV局からのインタビューが6~7分あり、その後が日本の藤井さんのインタビュー。
日頃からよく知っている人と話せるので、有森選手もほっとした顔をされたそうです。

「前回銀、今回銅でしたが、どうですか?」
という藤井さんの質問に、
"バルセロナでのもっとがんばればよかったという思いをしたくなかった"
と、有森選手は涙ながらに語り、
「自分で自分をほめたい」
とおっしゃったそうです。
その言葉は、その後何度も報道され、わたしもとても印象に残っています。

2000年のシドニーオリンピックでは水泳を担当されていた藤井さん。
銀メダルを取った田嶋寧子選手は、普段から明るくて何でも話してくれる方だったそうです。
インタビューの際にやってきてくれて、
「めっちゃ悔しい!!金がいいです!!」
って彼女らしい言葉が出てきたのだとか。

有森選手、田嶋選手、どちらの言葉もその年の流行語大賞に輝いたそうです。
藤井さんはこういった言葉が出てくるきっかけになった「インタビュー」について、こうおっしゃっていました。


はじめて会う人に、誰でも本音は言わない。
何度か会って、話をして、呼吸やその人を理解して、わかっていないと、なかなか本音を言ってくれない。
オリンピックでの名言も、普段から気心の知れていた人と話したから出てきたもの。
感極まって自分自身の本音を話した言葉。

一流のアスリートとして、他の人にはわからないような努力をしたり、いろいろなことがあるからこそそういう言葉が出てくる。
自分自身の話、専門のことでなら、「名言(いい話)」は出てくるので、そういった部分を引き出していく。

相手の本音を引き出すためには、相手を学ばなくてはいけない。
自分もわかってもらわなくてはいけない。
いろんなことの中から、会話とはどういうものかを学んでいくしかない。

相手の答えがあるから次の質問がある。
次の展開があり、もっと深く聞いていくことができる。
話をしながら、そこから先へ進んでいかなくてはいけない。

人と人とのつながりをいかに普段から大切にしていくか。
目と目をあわせながら会話する。
話をして相手のことをわかり、自分のことをわかってもらう。


藤井さんのお話をお伺いしていて、名言は誰が相手でも出てくる言葉ではないのだって思いました。
バックグラウンドを知っている人にだからこそ言える言葉なのかもしれません。
名言の陰に聞き手あり。

こんな風に、マスメディアで紹介される様々なインタビューの言葉は、聞く側と聞かれる側の人間関係から生まれているのかもしれないと思ってみると、また違った視点から見ることができますね。


また、アテネオリンピックで北島康介さんが100m、200mで金メダルを取った際のお話もしてくださいました。

北島選手と平井コーチの心理的作戦には、世界的な定評があるそうです。
予選でハンセン選手の隣で泳いだ時、北島選手には勝てる余裕があったそうです。
必ず右からスタート台に上がるハンセン選手が、左からスタート台に上がった時、ハンセン選手が動揺しているのがわかったのだそうです。

オリンピックの舞台に立つほどの選手なら、自分のルーティーンは決まっているものだそうです。
そこを間違えるほど動揺しているなら、ハンセン選手をできるだけ慌てさせることが勝利につながると確信し、北島選手は最初からハンセン選手にぴったりくっついて泳いだのだとか。
その結果、100m、200mで2冠に輝いたのだそうです

「一流のスポーツ選手になると、そういうところで相手を見抜いていかないといけない」
と藤井さんはおっしゃっていました。

ほんの一瞬のタイミングを競うスポーツだからこそ、最後は「心のあり方」が大切になってくるのだなあって思いました。
今回のオリンピックでも、トップレベルの方たちは普通の人間には到底できないことをしているのだから、心を律するレベルも桁違いなんでしょうね。

オリンピック終わっちゃってさみしいな。。

次は「大相撲編」です。
by songsforthejetset | 2008-08-27 00:16 | つれづれ
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