旅日記* 宮内庁三の丸尚蔵館「帝室技芸員と1900年パリ万国博覧会」


c0089310_8564450.jpg昨年11月の旅日記の続きです。
東京への旅行で、ぜひ行きたかったのが皇居東御苑にある宮内庁三の丸尚蔵館。

日曜美術館のアートシーンで「帝室技芸員と1900年パリ万国博覧会」展が開催されているのを知って、
これは行かないと!!!と楽しみにしていました。

アール・ヌーヴォーファンのわたしにとっては、"1900年パリ万博"って本当に心ときめくキーワードなのです。
行きたかったパリ万博。。
これは当時の映像です。
http://jp.youtube.com/watch?v=1CHb3sygVSw

1900年は、日本の明治33年。
ニーチェとオスカー・ワイルドが世を去り、サン・テグジュペリと稲垣足穂、マーガレット・ミッチェルが生まれた年。
世界がだんだんとつながり始めた時代。

日露戦争も、第一次世界大戦ももう少し後のことで、ほとんどの日本人にとって、他の国はまだたくさんの謎だった時代。
日本は西欧列強に追いつこうと、近代国家をめざしていました。

1867年(慶応3年)のパリ万博、1873年(明治6年)のウィーン万博などに出品された、日本の陶磁器や漆器、浮世絵などの美術工芸品や、そこで紹介された日本の文化は熱狂的な人気を呼んだそうです。

c0089310_904592.jpg1900年のパリ万博では、帝室(皇室)と宮内庁も出品にかかわったため、御下命により帝室技芸員を中心に、23名の作家に出品作の制作が依頼されたそうです。

各作家は、その持てる技を尽くして制作に当たり、作品としての完成度はもちろん、日本の近代美術工芸史を考える上でも重要な作品が生まれました。


c0089310_9222362.jpgそんな作品たちに会いに、ここ宮内庁三の丸尚蔵館に行ってきました。

昭和天皇が崩御された後、皇室から国に寄贈された美術品を保存研究し、一般に公開するための施設として1993年に開館した施設です。

宮内庁三の丸尚蔵館
http://www.kunaicho.go.jp/11/d11-05.html

規模は小さいですが、質の高い作品が展示されているし、お庭が美しい皇居東御苑の中にあって、無料で見学できるところも嬉しい。
おすすめの場所です!!

この日は日曜日だったからか、たくさんの見学の方たちで賑わっていました。

特に目をひいていたのは、見事なビロード友禅と刺繍の壁掛けでした。
ビロードに花鳥図などの友禅染を施した"ビロード友禅"は、明治11年に、京友禅「千総」12代目の西村総左衛門によって創始されたそうです。

「水中群禽図刺繍額」では、群れる水鳥の羽の1枚1枚、水中に潜った水鳥の姿まで写しとるという見事な表現の細密さに、感動するばかりでした。

また日本が誇る七宝の作品も素晴らしかった。

濤川惣助の「墨画月夜深森山水図額」は、無線・有線七宝の組み合わせで、幻想的な銀の月夜を描いていました。

並河靖之の「四季花鳥図花瓶」(いちばん上のパンフレットの写真のもの)は、精緻を極めた有線七宝の作品で、漆黒の地に鮮やかな四季の花鳥画が描かれていました。
鳥の羽の一枚一枚、小さな花のおしべやめしべまでが描かれ、微小な花びらや葉の一枚一枚にも美しくグラデーションがつけられた、渾身の作品でした。

高村光雲の「山霊訶護」は、小動物に襲いかかろうとしている鷲を、山姥が叱っている場面を木彫で表現しています。
小動物の足の反りや、笹の葉などの細かな表現が素晴らしい。
作者の温かな視線を感じ、ほほえましい作品でした。

また、雅楽の太平楽を舞う姿の豪華な彫像を、銅・金・銀・彫金・象嵌を用いて制作した、海野勝珉の「太平楽置物」も、精巧極まりない作品で、きっと作者の代表作品となった出来栄えなのではないかと思いました。

ほかにもまだまだ、すばらしい作品がたくさんあった。
ほんと感動しました!

世界に向けて、国の威信をかけて送り出す芸術作品というだけに、その完成度と力の入り方はすさまじかった。
他であまり目にすることがないほどの作品ばかりでした。
しかし、技術の確かさを超えて、作者の真摯な努力、真面目さ、温かな視点が作品たちから感じられました。

作家の方々のお写真が飾ってありましたが、美しい作品をつくる方は、やはり見た目の印象もどこか通じるものがありました。
やはり作品と人は似ています。

この作品たちが出品された1900年パリ万博は、ベル・エポックの花ともいえる存在。

ベル・エポックはフランス語で"良き時代"という意味で、19世紀末から1914年の第1次世界大戦前までの、繁栄したパリの文化に代表される、華やかで優雅な時代をさします。
タイタニックが沈没したのが1912年なので、映画「タイタニック」もそんな雰囲気をよく表していると思います。

考えてみたら、わたしが好きなものは、ほとんどこのベル・エポックの時代に集中しているのです。
アール・ヌーヴォー、ドビュッシーやラヴェル、音楽・美術・文学などの芸術やファッション、文化。
映画がはじめて上映され、ライト兄弟が初飛行に成功した時代。
日本はと考えてみたら、日露戦争が1904年(明治37年)なので、これまた大好きな「坂の上の雲」に描かれている時代です。

素朴な良心、まだ見ぬ世界への夢と憧れが感じられる時代。
そんな100年前の時代がわたしは好きみたいです。
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by songsforthejetset | 2009-01-10 10:36 | 芸術いろいろ | Comments(5)
Commented by Julio Sosa at 2009-01-10 15:19 x
1900年パリ万博の動画が凄いですね、
ホントに動いてるよ。

もう20年以上前のテレビCM、
焼酎の「薩摩白波」のCMを覚えていませんか?
何と「薩摩白波」は、パリ万博に出品展示されたみたい。

CMの映像は、
太平洋の荒波を乗り切る帆船、焼酎を入れた白い酒瓶(古めかしくSATSUMAと印字されてる)等、
ナレーションは、
『サムライの酒が海を渡り、1900年パリ万博に出展された』と。
当時、何度見てもロマンを感じましたね。
私は、ワイン党なので焼酎は飲めませんけどね。
Commented by songsforthejetset at 2009-01-10 22:18
ほんと、こうやってみると服装は違えど、今の人といっしょだなあって思います。
オペラ座前の道路が最初の方に出てくるけど、いま車が走っているところが馬車になっただけというのも、建物が変わっていないパリならではだと思います。

昔NHKで放送した、「映像の世紀」の最初がパリ万博で、それではじめて映像を見ました。
考えてみると、ここに映っている人たち、誰一人としてもう今生きていないんだよね。
そう思うと、わたし達って歴史の中で浮いて消える泡のような存在なのだなあって思います。
だから生きている意味を探し続けることが大事なのだって。

さつま白波のCM、なんとなく覚えてます!
その瓶も角っぽい白い陶器のでは?
何かで写真見たことあります。
外国は夢のような存在だった時代に海を渡るって、ロマンですね!
Commented by おばおば at 2009-01-11 21:43 x
私も何年前だったかな(^^;)、国立博物館・平成館で開催された「万国博覧会の美術」展で日本から出品された品々を拝見しましたが、実に「国の威信をかけて作られた凄まじいまでの美と技術の極致」を目の当たりにした気がしましたよー。
今となってはこれを作る技術を持った人はいないのではないかと思われるような作品の数々…思い切り近付いて夢中で観たせいで、私とリアルフミヨちゃんは係員に何度か注意されました。(笑)
展示点数が多かったのと図録が重かったおかげで帰りはヘトヘトになった思い出が…(^^;)

建物と言えば。今日買った本に「日本に帰ってくると建物も着る物もグレーが多すぎる」って書いてあって大いに同感!でした。
戦前の日本の街並みをカラー映像に収めているのを拝見する機会があったのですが、建物の色合いといい意匠の凝らし具合といい色とりどりの装飾といい、実に美しかったです。田園風景も美しかった。人々の装いも素敵でした。
先の大戦でその美意識が徹底的に破壊されたのは残念なことです。
「文化」は心の栄養剤!今こそ文化や美の力が大事なんじゃないかなぁと思う今日この頃です。
Commented by songsforthejetset at 2009-01-11 22:46
それみたかった~!!
ほんとに「日本の技術の粋ここにあり」という感じで、外国の人に技術を見てもらおうという職人の一世一代の心意気がビシビシと伝わってきました。
作品にかける気迫というか、命がけでつくってる感が作品から迫ってくるもの。
技術もあるかもしれないけど、その時代の心を持った人じゃないとつくれないものだなあって思いました。

「明治生まれが国を動かすようになったら日本は終わる」
って、江戸生まれの方たちは言っていたそうです。
今時の若者は・・という意味ですが、開国間もない日本人の、江戸期から培われてきた精神文化の高さを感じさせる言葉だと思うし、そういうところがあらわれた芸術作品に外国の方も感動したのだと思います。

近づいちゃうよね~!
わたしもたまにおでこをぶつけて、イテッとなります(笑)。
Commented by songsforthejetset at 2009-01-11 22:46
戦前って街も綺麗だったのですね!!
戦争や軍国主義って、美しいものを徹底的に排除してしまう感じがします。
今日pieniで新渡戸稲造の「武士道」を借りてきたんだけど、音曲や和歌に親しみ、優雅さを尊ぶことは武士としてのたしなみでもあったそうです。
自然でも、文化でも、人でも、綺麗なものを素直に「良い」として尊重する心って大事だと思う。

Beauty is truth, truth beauty,—that is all
Ye know on earth, and all ye need to know.
わたしが好きなキーツの言葉、
「美は真 真は美 それがすべて
  汝らが知り また知っておらねばならぬことだ」
はほんとその通りだと思います。

美は真実であり、善であり、世の光。
毎日の生活に美しさを増していきたいですね。
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